京都の本ってよくあるけど、京都の中でも特定の地域についてこんなにたっぷり書かれた本ってあまり見ない。
エスノグラフィとタイトルにあるように、応仁の乱の歴史、みたいなものではなくて、現在生きてる人たちの声が収録されている。
商店街のミセノマを軸に、物件を相続してゲットする人もいれば、間借りで始める人もいて、という、街との関わりについて解説してくれる。言われてみるとたしかに小さくて変な店がちょこちょこあったり、路上で野菜を売ってる人がいたりする。
2010年くらいに来たときにはシャッターがもっと閉まっていたような記憶があったり、その後訪れたらすっかり鯖とアニメ推しになっていたりと、イメージ変わったな…と、ただ受け入れていたけど、この人たちにはこんなことがあって今こうなってるんだな、ということがわかるとおもしろい。
かつて大型スーパーの出展反対運動があり、補助金を得て広場を改修した、という話は当然知らない話だけど、かつて今出川にあった伝説の喫茶店、とかは、最近WiFiができたみたい、という知人のブログ記事を2008年くらいに見かけた記憶がある。その後全焼していて、Googleマップでみたら普通の一戸建てになっていた。そういう、半分知ってて半分知らないような距離感で読めるのがおもしろい。
たこ焼き屋さんの証言で、左京区が一番盛り上がってたのは10年前です、みたいな話も書かれていて、言われてみると最近はおとなしいような気もする。
左京区というと、たしかに、めちゃくちゃなものをよしとするカルチャーをイメージするものの、京大の立て看板のイメージに引きずられすぎているような気もして、一部の人が張り切っているのをおもしろがっている、という側面が強いかもしれない。左京区民の大半がめちゃくちゃなものをよしとしているわけではなさそう。
整ったデザイン、とか、プロによるデザインとは距離があり、市民がふにゃふにゃ書いた絵をよしとしているような印象。学園祭では、焼きそば300円みたいなポップを手書きしたりするけど、暮らし自体が学園祭みたいなイメージ。けっしてクオリティが低いと言っているわけではなくて、デザインが全市民に行き渡っているということだと思う。
中央のオフィスで作った印刷物を全国で掲示する、という、大規模な資本が流入していなくて、個人経営の店が多い、ということかもしれない。
