スクラムとの関わりは、わりと我流で、本を読んで試してみる、という形でやってきていた。
好きな本は『アジャイルサムライ』と『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』で、チーム内で読み合わせをやってインセプションデッキを書いたり、本を教科書にスクラムイベントを構築して運用しようとしていた。
社内のチーム横断的なおしゃべりの会である「すくすく会」で他チームの方としゃべってみるなど、ちょっとずつ暮らしに取り入れようとしていた。
そうやって草の根でやっていたのだけど、会社の予算で認定スクラムマスター研修を受けられるチャンスがあったので、行ってきた。
認定スクラムマスターになるには、いろんな講義があるのだけど、受けたのはこのコース。
en.abi-agile.com
テスラやスペースXでもお仕事されていた、Joe Justice先生のコース。ホームページの陽気さを見てください。授業本編も陽気な雰囲気だった。会社からは3名参加したので、共同でメモを取ったり、受講後に授業の感想をふりかえって喋ったりするのに便利だった。
基本はスクラム・アジャイルの授業なのだけど、先進的な事例として、Joe先生の経験から、テスラ、スペースXでの事例も教えてもらえる。
教科書通りのスクラムから、更に進むとこういう形もあるんだな、ということもわかっておもしろかった。
先進的な事例はこの本にも紹介されていて、通常の工場はラインを構築したらしばらく動かせないのだけど、テスラでは組み立てた部品を自動運転車で運んでいくことで柔軟にプロセスを変更できるようになっているらしい。
ロールプレイの時間があって、講義の時間中、4人くらいのチームでプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者、のロールを順番に体験できる。
7分ごとに、リファインメント、スプリントプランニング、実装、デイリースクラムー…と順番にイベントをこなしていく。
7分でなにができるの?という話だけど、うちのチームは、Miroの上で、各自が目や口などのパーツを持ち寄って遊べる福笑いなどを開発していた。他のチームはAIを使ってチームの紹介の歌やプロモーションビデオを作っていた。
仕事中の取り組みとしては、時間のない中で最低限これくらいはスクラムっぽい感じでやるか…みたいな活動だったのが、きちっとやるとこんな感じで、このロールの人はこれをやるんだな、というのが頭に入った。
普段の活動とのギャップを体感できたので、会社に持ち帰ったあと、ここはこうしたらもっといいんじゃないか、ということを考えられるようになった。
スクラムマスターとしてロールプレイする中では、普段、仕事で喋っているような、プロダクトオーナーの言うことを開発者向けに通訳して質問して、こういう情報があれば開発できますか?ってファシリテートする、ということをすると、喋ってみたらこれじゃダメなのですりあわせよう、という流れにできたりと、普段やってるアクションがそんなに変じゃない、という経験ができたのもよかった。
講義が終わってから、4択クイズが50問くらい出てくる試験を受けて、無事合格したので、認定スクラムマスターという資格を得られた。2年更新らしい。
資格を得るだけでは知識を持っているだけで、日々の活動に実践、還元していかないと意味がないので、しばらくは、スクラム、アジャイル寄りな考えを持つ人物として振る舞っていきたい。
研修に行く前の直近数ヶ月くらいの個人的なテーマは、エンジニアリングマネージャとしての振る舞いや知識を身に着けよう、ということだったのだけど、イマイチ、できた、とか、これをやれば活躍できそうだ、という、とっかかりがない状態だった。
それと比べると、スクラムはルールの決まったゲームであり、マスターはその中のロールであり、ロールプレイングで体験できる、という点で習得しやすいと思う。
チームにスクラムマスターが居ると、障壁を取り除いて物事を加速させる、という視点が得られて、そうすると単位時間あたりにできることが増えて、経験できることの数や量も増えて、各自の成長につながる、という流れで、エンジニアリングマネージャとしても成功、ということにしたい。
単位時間あたりの生産性が低いままにいろんな新しいことをやろうとするのは、睡眠時間や血圧など健康状態が悪いのに新たな趣味や勉強を始めようとしているようなもので、その前にまずは健康に気を使ったら効率的に趣味や勉強に打ち込めるようになる、というイメージ。
エンジニアリングマネージャには4つの象限があると言われていて、それぞれで追うべき目標がある、4つのゲームを同時にやっているようなイメージ。
エンジニアリングマネージャの振る舞いを分解して、こうやって資格化して、順に習得できたらいいのに、と思うけど、やることが多いのか、バランスの取り方が高度なのか、なかなか身につけづらいと思う。
あとは、まず前提として、何かを普段からやっている立場、というのがあって、そこに加えて、エンジニアリングマネージャとしての影響力を出していく、という形がわかりやすいと思う。
誰とどう接するか、というコミュニケーションパスが定まらないままに影響を出すのは難しい。スクラムマスターが活躍するためには、スクラムイベントが設定されてて、必要な人たちが集まる。そういう場があってこそ活動できるはずで、一対一でチャットのメンションをし合うだけなら、なかなかうまくいかないんじゃないかと思う。
ロールがいくつかあり、そこでの振る舞いが、スクラムマスターとしてのアドバイスも込められているし、エンジニアリングマネージャとしての各自の成長を願う眼差しも混ざったアウトプットになってくる、みたいなイメージ。
水道をメディアとして持っている人がいたら、水道水にフッ化物を混ぜる、という形で、人々の歯を健康にするというアクションを試みることができる。
なので、スクラムマスターとしても活動します、みたいに、チームと関わるチャンネルを増やしていくことが、エンジニアリングマネージャとしての目標達成に必要なのではないか。
という点で、研修に行ってみたのは良かったと思う。